【なぜ】アゼルバイジャンとアルメニアで戦争。どこの国?

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アルメニア人勢力が実効支配するアゼルバイジャン西部の山岳地帯ナゴルノ・カラバフで2020年9月27日、大規模な戦闘が起きました。
数十年来の係争地において危険な戦闘が再開したのです。
激しい戦闘で死者がたくさんでています。
しかも、戦闘員だけでなく民間人にも被害が広がっています。
アゼルバイジャンでは「厳戒令」も出ています。

「アゼルバイジャン」「アルメニア」という国ってどこにある国?、どんな人が住んでいる国?
馴染みがない人のほうが多いのではないでしょうか。

この記事では、二つの国がどういう国で、なぜ戦争になっているのかをまとめました。

なぜ今、戦闘が始まった?

アゼルバイジャン領内に「ナゴルノ・カラバフ(Nagorno-Karabakh)」という地域があります。
今回の戦闘はこのナゴルノ・カラバフ自治州で始まりました。
緊張は夏から徐々に高まっていて、9月27日に直接衝突へと発展したのです。

この地域は、国際的にアゼルバイジャンの一部として認められていて、多くの国の地図上でもアゼルバイジャンの一部として認識されています。

しかし実際は、アルメニア人が多く住んでいて、実効的に支配しているのはアルメニア人なのです。

この地域の支配権を争うアゼルバイジャンとアルメニアの対立は数十年前からくすぶり続け、
断続的に起きる武力衝突や暴力的な事件で多数の犠牲者が出ています。

今年の7月に低いレベルで衝突が起こったときは、新型コロナウイルス感染症で危機的な対応を迫られていた国際社会の反応は薄かったのです。

そして、過去に仲裁に当たったロシア、フランス、アメリカなどの大国が現在、新型コロナウイルス感染症の第2波第3波、米大統領選、レバノンやベラルーシの大統領選挙など数々の危機への対応に振り回されています。
このような状況から今、まさに戦争が始まったのかもしれません。

ナゴルノ・カラバフ自治州とは

ナゴルノ・カラバフ自治州は、アゼルバイジャン領土内のアルメニア高原の東端に位置し、
3000メートル級の山地に囲まれた標高1000~2000メートルの高地にあって、森林に覆われた地域です。

アルメニア国境から30kmほど離れた京都府ほどの広さの土地に15万人が暮らしています。

歴史的にはアルメニア領だった時代もありましたが、旧ソ連ではアゼルバイジャン共和国の自治州となっていて、国際法ではアゼルバイジャンの一部と認められています。

しかし住民の8~9割がアルメニア人です。

1990年代の戦闘でアゼルバイジャン軍が撃退されて以降、アルメニア人勢力がアルメニアの支援を得て自治を行っています。
1994年の停戦合意にもかかわらず、2016年にも少なくとも200人が死亡しました。

ナゴルノ・カラバフ自治州の財源はアルメニアからの支援と、世界に離散するアルメニア人からの寄付にほぼ全面的に頼っているといわれています。

そして、アゼルバイジャンによる支配を拒否しているのです。

アゼルバイジャンとアルメニアってそもそもどこにあるの?

アゼルバイジャンとアルメニアはどちらも旧ソ連の中の国でした。
このアゼルバイジャンとアルメニアは、ヨーロッパとアジアを結ぶ戦略的に重要な「コーカサス回廊」に位置します。

イランの北でトルコの東、そしてロシアの南に位置し、それらの大国と国境を接しているのです。

ややこしい位置関係がわかります。

アゼルバイジャンは

アゼルバイジャンの人口は約990万人。

トルコ系民族のアゼリ人が9割を占め、言語もトルコ語によく似ていて、両国の関係は、「一つの民族、二つの国家」と形容されるなどトルコとの繋がりが伝統的に深いです。

アゼルバイジャンは中世にイスラム教を受け入れました。
イスラム教のシーア派が多数を占めますが、スンニ派のトルコとは民族的にも言語的にも近く、歴史的な結びつきも深いのです。

国土は、カスピ海に面し、石油と天然ガスを豊富に産出します。
カスピ海の原油や天然ガスを国際市場に運ぶパイプラインがトルコに向かって延びています。
このパイプラインは、ロシアもイランも、アルメニアも通らずトルコから欧米へと石油と天然ガスを供給するルートになっています。

アルメニアは

アルメニアは紀元301年の古代アルメニア王国の時代に、世界で最初にキリスト教を国教化しました。

人口は約290万人しかいませんが、世界中に約1000万人のディアスポラ(離散民)がいるとされています。
そして、商才に長け経済的に成功した人が多く、その人たちからの寄付の送金が、目立った産業をもたないアルメニア経済を支えているとも言われています。

また、南カフカス地方では唯一の親ロシア国家で、ロシア軍が駐留しています。

トルコとは第一次世界大戦時のアルメニア人強制移住問題を巡り、根深い歴史問題を抱えています。
それは、トルコ政府が今も否定しているのですが第一次世界大戦時代のアルメニア人虐殺です。

トルコの前身にあたるオスマン帝国によって1915年から1923年の間に、150万人ものアルメニア人が殺された、とアルメニア人は主張しています。
トルコは死者数を数十万人としており、その原因は組織的な大量虐殺ではなく政府軍と戦った結果だと主張しています。

この時期に、膨大な数のアルメニア人がシリアの砂漠などに強制的に移住させられ、多くがその途中で死亡するという事件も発生した。

欧米で強い政治力を持つ「アルメニア・ロビー」の影響もあり、アルメニアの定める「アルメニア人虐殺追悼記念日」(4月24日)前後には、
毎年欧米の国会や地方議会などで同問題を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に認定するか否かが議題になります。

宗教の対立も二国間の衝突を深める要因

領土問題以外でも、対立を深める要因があります。
アゼルバイジャンでは主としてイスラム教シーア派が信仰されていて、
アルメニアでは主としてキリスト教が信仰されています。
宗教もこの二国間の対立を深めてきた要因だと思われます。

トルコはアゼルバイジャン支持を表明

今回の紛争でトルコは早々と兄弟国であるアゼルバイジャンの指示を打ち出しています。

アゼルバイジャンからトルコにはパイプラインが通っていますし、アゼルバイジャンと共同でエネルギープロジェクトも進めています。

アルメニアとは「アルメニア人虐殺」というオスマン帝国時代からの軋轢があります。

アゼルバイジャンの主要民族であるアゼリ人はトルコ系の民族で、イスラム教シーア派が多数派を占めていることもあって、トルコの歴代政府はアゼルバイジャンを熱心に支援してきました。
現政権のエルドアン大統領はアゼリ人を支持すると誓い、ナゴルノ・カラバフの「占領」を終わらせるべきだとアルメニアに要求しまた。
9月28日には、紛争に終止符を打つ時がきた、と語っています。

また、一部には、トルコの無人機や軍用機、軍事顧問の派遣だけでなく、シリア人傭兵を配備したとも伝えられています。

ロシアとアルメニアは安全保障条約を締結している

オイルマネーのあるアゼルバイジャンと、アルメニアの60倍以上のGDPを持つトルコに挟まれた小国アルメニアには「集団安全保障条約」と呼ばれる条約があります。

集団安全保障条約機構の目的は、条約加盟国の国家安全保障、並びにその領土保全にあります。
ある加盟国に脅威が発生した場合、他の加盟国は、軍事援助を含む必要な援助を提供する義務を有するのです。

この「集団安全保障条約」には「ロシア・アルメニア・ベラルーシ・カザフスタン・キルギス・タジキスタン」が加盟しています。
アルメニアは、この外部の侵略から同盟国を保護するロシア主導の集団安全保障条約機構に参加しているのです。

さらに、ロシアはアルメニア国内に軍事基地を持ち、アルメニア軍に武器を提供しています。

ロシアとアゼルバイジャンの関係は悪くはないのですが、安全保障の観点から見れば、防衛協定を結びアルメニアに約5000人のロシア兵を駐留させ、南コーカサスで唯一の軍事基地を持つなど、ロシアとアルメニアの結びつきはより深いといってよいでしょう。

トルコとアルメニアの国境はロシア軍も警備に当たっています。
トルコから見れば、アルメニアの背後には常にロシアがいるといえるのです。

これまでのところ、戦闘は主にナゴルノ・カラバフに限定されていて、アルメニア本国の領土が脅かされる事実はないようです。
ロシア政府はこれまでのところ、この紛争に関して停戦と交渉を促しているが、同盟国のアルメニアを支援するために引き込まれる可能性はまだ残っています。

大国・周辺国の反応は?

更に周辺国・大国の思惑が絡まっています。
エネルギーの安全保障の問題が大きく影響しています。

EUもこの紛争によるエネルギーの安全保障が脅かされることに敏感に反応しました。
EUの天然ガス総輸入量の約4割はロシアからです。
EUへのエネルギーの供給の大きな割合を担ってきたロシアからの供給に対し、
アゼルバイジャンからのエネルギー供給は、
供給先の多角化という点で重要なのです。
そのため、この紛争でアゼルバイジャンからのパイプラインが影響を受ければ、EUのロシア依存が進む懸念があります。

ロシアのエネルギー輸出は、「純粋なビジネス」という見方もある一方で、アメリカは「エネルギーの政治利用」を強調します。

アメリカも同盟国のEUのさらなるロシア依存を招きかねないという強い懸念があるのです。

イスラエルもナゴルノ・カラバフの状況を注視しています。
近年イスラエルはアゼルバイジャンへの武器販売を拡大していて、「自爆ドローン」も提供しています。

イスラエルは、最大の敵であるイランを封じ込めるためにアゼルバイジャンとの良好な関係を維持したがっているのです。

同じ理由で、アメリカは2016~17年の約300万ドルだったアゼルバイジャンへの安全保障関連投資を、2018~19年には約1億ドルに引き上げました。
アルメニアが2018会計年度にアメリカから受け取った安全保障支援金は420万ドルだけです。

 

まとめ

何故このような戦争が起きているのでしょうか?
アゼルバイジャンとアルメニアの間には、領土、民族、宗教などの対立があり、周辺国や大国の思惑も絡まった紛争の歴史があります。

この戦争が早期に集結するのか、複数の国を巻き込んでエスカレートするのか、まだわかりません。

そして何より、早期の解決を祈ります。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

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