文部科学省が現在の高校普通科を、「普通科」と、新たに、「学際融合(仮称)」と「地域探究(同)」に、早ければ令和4年(2022年)春にも再編するようです。
「学際融合(仮称)」と「地域探究(同)」ってどんな学科でしょうか?
高校普通科を再編する必要性があるのでしょうか?
再編されるときに高校生になる人たちは今何を準備すればいいのでしょうか?
高校普通科の再編
文部科学省が現在の高校普通科を、「普通科」と、新たに、「学際融合(仮称)」と「地域探究(同)」に、早ければ令和4年(2022年)春にも再編するようです。
学際融合学科(仮称)は、教科の枠組みを超えた学びに取り組む学科として、
地域探究学科(仮称)は、地域社会の課題解決を目指す学科として、高校に、普通科に加え新設されます。
「教育再生実行会議」が、令和元年5月17日に、「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について(第十一次提言)」の中で、高校普通科の画一的教育の改革を提言しています。
「教育再生実行会議」とは、21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移し、教育改革を推進するための会議です。
高校普通科に加え、新しい学科「学際融合」、「地域探究」はどんな学科?
「学際融合学科(仮称)」は、教科の枠組みを超えた学びに取り組む学科として、高校に、普通科に加え新設されます。
学際融合学科の特徴の1つ目は、「貧困」や「環境問題」といった地球や現在社会がもっている課題解決を目指すことです。
学際とはいくつかの異なる学問領域(分野)をまたがって関わるという意味です。
持続可能な開発目標(SDGs)などの課題可決には、教科の枠を超えた学びが必要です。
例えば、「環境問題」に取り組むためには、「社会科」の知識だけでなく、「理科」の知識も必要です。
今の学校教育では、社会科と理科がばらばらで授業をしていますが、実際に「環境問題」を解決するには、どちらの知識も重要です。
学際的な学びでは、こうした教科や分野のカベを超えて、様々な視点から問題を考える学習をするということです。
近年では、「学際系」の大学やコースは珍しくなく、東京大学・京都大学・早稲田大学を始めとして、多くの大学で注目を集めている分野になります。
もう一つの特徴は、「連携」です。大学や国際機関との連携体制が検討されています。高校それぞれの特色がでるよう、大学等との連携が考えられるようです。
「地域探究学科(仮称)」は、地域社会の課題解決を目指す学科として、高校に、普通科に加え新設されます。
特徴の1つ目は、地域の課題に注目することです。今の普通教育は、大学受験に偏った教育が中心ですから、地域に注目した課題は面白いかもしれません。
2つ目は、地域や企業と共同する「産学連携」をすることです。県市町などの自治体や地元企業との協力体制や高校と地域をつなぐコーディネーター配置などが検討されるようです。
さらに、人工知能(AI)の進展などに伴って到来する「Society(ソサエティー)5.0」※の時代を生き抜くには、全生徒が文系・理系のどちらかに偏ることなく学ぶ必要性が強調されています。
文系・理系に偏らないバランスのとれた科目履修が必要になるようです。
大学入試でも「文系・理系に偏った試験からの脱却」を目指すとされています。
新たな学校では、今までのように普通科で理系クラス、文系クラスと別れていたのとは全く様相が違いますね。
今後、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の特別部会に基本方針が示され、さらに具体的な制度化の検討が加えられます。
※「Society(ソサエティー)5.0」とは・・・第4次産業革命とも言われる、AI やロボティクス、ビッグデータ、IoT といっ た技術の急速な発展に伴い到来する超スマート社会のことです。
今何を準備すればいい
令和4年(2022年)以降に高校に入学する今の中学生や小学生は、普通科の再編に対応しないといけません。今何を準備すればいいのでしょうか?
文部科学省は、全ての高校にスクールポリシー(①育成を目指す資質・能力 ②教育課程の編成・実施 ③入学者の受け入れ――に関する三つの方針)の決定を求める予定です。
スクールポリシーとは、学校の教育方針を示すものです。どんな教育をするのか、どういう生徒になって欲しいのかなどいわばその学校の特徴です。例えば、地域に密着した地域課題を解決する人材を育てますとか、国際的に活躍する人材を育てますなどです。
今後、このスクールポリシーが学校選びの大きな判断基準になっていくと思われます。
もちろん今まで通り、「偏差値の高い高校に行く」「家から近い高校に行く」という選択基準は残りますが、「学校の特徴で決める」という新しい選択肢ができることになります。
「自分の学びたいことや学校の特色に注目する」という姿勢は持っておいてください。この考え方が今後の人生の大きな節目である「大学受験」や「就職試験」、「転職」などの進路選びの基本だからです。
高校普通科改革の必要性
高校には、普通教育を行う普通科、
商業、農業、工業など14の専門教育を行う専門学科、
普通教育と専門教育を合わせた総合学科の3つの種類があります。
現在200万人を超える高校生のうちの約70%の生徒が普通科に通っています。
普通科では国語や数学、理科、社会など基礎的な科目を主に学びます。そして大学等の進学に向けた画一的な教育が行われ、特色が乏しいと指摘されています。
少子化と大学の乱立で大学に入りやすくなっているのも事実です。
今、多くの大学、特に私立大学では一般の大学入試試験によらずに入学できる制度を持っています。
事実上、大学入試試験以外で入学させている学生は半数を超えるのではないかとも言われています。
学問や将来的な職業などの目的意識が低いまま進学する生徒が少なくありません。
先の提言では、現在の高校普通科は、教育が画一的に陥り、生徒の興味関心を踏まえる内容になっていないと判断し、「生徒の学習意欲に悪影響を及ぼす」と見直しを迫っています。
教育再生実行会議の提言(第11次)
教育再生実行会議の第11次提言では、高校普通科の教育内容は画一的で、生徒の意欲が高まる内容になっていないと指摘して改革を提言しています。
そして、進学や就職といった自分の将来のキャリアを自ら設計する能力の育成や、国際的なリーダー養成など、学校ごとに4タイプを示し教育内容に特色を持たせるよう促しています。
<普通科の類型の例>
①予測不可能な社会を生き抜くため自らのキャリアをデザインする力の育成を重視するもの
②グローバルに活躍するリーダーや国内外の課題の解決に向け対応できるリーダーとしての素養の育成を重視するもの
③サイエンスやテクノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視するもの
④地域課題の解決等を通じて体験と実践を伴った探究的な学びを重視するもの技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について(第11次提言)
まとめ
今回の高校普通科は、3つの学科、つまり「普通科」と、新たに、「学際融合(仮称)」と「地域探究(同)」に再編されることになります。
その制度化等の詳細は諮問機関である中央教育審議会の議論を経て決定されます。
この問題、高校普通科の在り方は、過去にも議論されてきています。今回初めて検討されたわけではありません。
「総合的な新学科」の創設や「新しいタイプの高等学校」といった提言がされています。
大きく変わる世界情勢や、時代のうねりをその時々に適格にとらえ、教育の改革は必要であると思います。
子どもたちが犠牲になるようなことになっては大変です。
慎重にかつスピード感を持って改革していってほしいものです。
最後までご覧いただきありがとうございました。