日本学術会議が新会員として推薦した候補のうち6人について、内閣総理大臣が会員に任命しなかった問題が報道されています。
そもそもこの日本学術会議ってなに?
その推薦された新会員の一部の人の任命が見送られたって、どこが問題なのでしょうか?
この記事では、簡潔に、日本学術会議とその任命問題についてまとめています。
日本学術会議とは
日本学術会議とは
日本学術会議は、学問研究に関する国の機関で、
実績のある日本の学者や研究者を会員として構成され、
政府から独立した立場で
政策の提言などを行う
人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の学者の代表機関です。
日本学術会議の目的と職務
日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。
職務は、以下の2つです。
・科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
・科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。日本学術会議HPより
日本学術会議の会員
日本学術会議は、210人の日本学術会議会員をもつて、組織されています。(日本学術会議法第7条1項)
会員の任期は、6年で、3年ごとに、その半数が任命されます。(日本学術会議法第7条3項)
日本学術会議の会員の推薦と任命
日本学術会議が、世の中の優れた研究または業績のある学者・研究者から会員の候補者を選んで、
内閣総理大臣に推薦します。(日本学術会議法第17条)
日本学術会議のその推薦に基づいて内閣総理大臣が会員を任命することになります。(日本学術会議法第7条2項)
推薦された候補者以外の人を任命することはできません。
2020年度の日本学術会議の予算は10億円
日本学術会議の2020年の予算は、 10億4,896万円です。
財源は国民の税金です。
日本学術会議は独立した地位の機関である
日本学術会議は内閣総理大臣の所轄
(日本学術会議法)
第1条1項 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2項 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3項 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
つまり、日本学術会議は国の費用で運営され、国民から間接的に選ばれた内閣総理大臣が「所轄」しているということです。
日本学術会議の職務は独立して行う
(日本学術会議法)
第3条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
ただし、日本学術会議は、内閣総理大臣や政府の指揮命令から独立しているということを意味します。
政府の方針や政策から独立した立場であるため、
政府は一定の事項について日本学術会議に対して意見を求める(「諮問」)ことができます(同第4条)。
また、日本学術会議は一定の事項について政府に対して勧告することができます(同第5条)。
さらに、政府に対して資料提出や説明などを要求することもできる(第6条)こととされています。
これまでは、形式的な任命という政府の見解
昭和58年(1983年)、選挙により日本学術会議の会員を選ぶ制度に代わり、現在の推薦制度が導入されました。
その時の国会審議で政府が答弁次のように答弁しています。
「~絶対にそんな独立性を侵したり推薦をされた方を任命を拒否するなどというようなことはないのですか。」
との質問に対して政府の答弁は、
「~私どもは、実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません。
~ちょうど二百十名ぴったりを出していただくということにしているわけでございます。それでそれを私の方に上げてまいりましたら、それを形式的に任命行為を行う。
この点は、従来の場合には選挙によっていたために任命というのが必要がなかったのですが、こういう形の場合には形式的にはやむを得ません。
そういうことで任命制を置いておりますが、これが実質的なものだというふうには私ども理解しておりません。」
政府は、内閣総理大臣の任命は形式的なものであるので、会員の任命を左右するものではない、と答えています。
新会員として推薦した一部の候補を、内閣総理大臣が任命しなかった。なにが問題?
日本学術会議は内閣総理大臣の所轄ではあっても独立した地位の機関なのですから、内閣総理大臣の意向に従って動く組織ではないので、推薦されたら任命されなければならないというべきです。
しかも、過去の国会での政府答弁では、内閣総理大臣の任命は形式的なものであるので、会員の任命を左右するものではない、と答えています。
今回の事実と相反する答弁を政府は国会でしています。
今回の任命拒否は法律違反である。
そして、政府の意向にあった意見の学者しか認めないのは学問の自由の侵害であるとの主張があります。
しかし、反対の主張もあります。
日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄であり政府から独立して職務を行う「特別の機関」とあるものの、任命権は内閣総理大臣にあるため、推薦されたもののうちから任命することは(任命拒否は)法的には何ら問題はない
、推薦に対する拒否権はあるとする主張です。
しかも、105名中の6名であり過度な対応とはいえない。
また、政府が学問をするなと言っているわけではないため、学問の自由の侵害にあたるおそれはありません。との主張です。
政府が任命拒否(見送り)について説明しないことが問題の本質
今回、政府は人事である以上、どのような組織であれ、その理由を明らかにできないと答えています。
こんな答弁ではなく、理由を説明すべきではないでしょうか。
日本学術会議に10億円以上も税金を払うのは、
「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること=科学で国民生活をより良くしてゆくための提言」のためです。
ですから、論文、活動などあらゆる事項を考慮し、
それにふさわしい研究をしている方を学術会議の会員として、
推薦された方々の中から選別して任命したしました。
と、政府は答弁するべきです。
政府は事情変更により1983年の国会答弁を修正することは可能です。今回そしたのでしょう。
そこで、異論があれば議論すればいと思うのです。
日本学術会議のあり方を検討する提言もあるようです。
外国のアカデミーのような例もあることですし、政府の機関ではない位置づけも検討されるべきです。
まとめ
日本学術会議は、210人の日本の科学者で構成され、6年の任期があり、その半数ずつが3年ごとに日本学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣により任命されています。
この日本学術会議は、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。
そして、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ることと科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させることを職務としています。
その会員の任命で推薦された一部の人が内閣総理大臣に任命されなかったことについては、独立した機関としている法律の趣旨とは疑義を生じると思われます。
さらに、過去の国会答弁とも相違があるのですが、
過去の答弁を見直したこと、任命拒否(見送り)について
政府としての理由、正当性を説明すべきであると思います。
その上で、日本学術会議にあり方を含め、議論、検討されるべきであると考えます。
過去にあった国民として、消化不良、不満が溜まるだけの事柄になってしまうことが心配されます。
最後までご覧いただきありがとございました。