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領収書、なぜ「上様」。意外と知らない意味と読み方とダメな理由。

領収書

領収書を書いてもらうときに、宛名を「上様」と書いてもらうことはありませんか?
宛名が「上様」の領収書って、どうなのでしょうか?
この記事では、領収書の宛名に「上様」を使うことに問題があるのかないのか?
意外と知らない「上様」の由来と意味と読み方についてまとめています。

領収書の「上様」の読み方。”うえさま”ではなく”じょうさま”?

領収書に書かれている「上様」は、一般的には「うえさま」と読みます。
「うえさま」の他に、「かみさま」「じょうさま」と読む場合もあります。

上得意(じょうとくい)の客を意味する「上客(じょうきゃく)」を略したという説に従ったときは、
「上様」の読み方としては正しくは「じょうさま」ということになります。

「上様」という呼び方の由来・意味は?なぜ、上様?

領収書の宛名でよく使用される「上様」ですが、そもそもなぜ「上様」が用いられるようになったのでしょうか。

上様の由来や上様が使用されるようになった背景にはいろいろな説がありますが、主に次の2つの理由が知られています。

1つは、中国に由来するというものです。

「上様」とは直接名前を呼ばずに目上の人を表すときに使われていた言葉で、古代の中国においては、皇帝を「上様」と呼んでいました。
偉い人の名前を直接呼んでは失礼にあたるという時代だったようです。
それが日本に伝来し、室町時代の大名や江戸時代の征夷大将軍など地位の高い人や目上の人に対する尊称として上様という語を使っていました。
時代劇で将軍やお殿様を上様と呼んでいるのがこれです。
やがてこれが商人にとって立場が上になる商品やサービスを購入してくれたお客さんに対して敬意を表す意味において、名前の判らないお客さんのときは領収書に上様と書くようになったというものです。


2つめは、お得意様の最上級である上得意のお客様に対して使用していた呼称である「上客」を略したという説です。

上客が変化し、上様となって領収書で使われるようなったというものです。
上様の読み方は「うえさま」が一般的ですが、「じょうさま」と呼んでも間違いではありません。

領収書の宛名には、有効?無効?

領収書の宛名のところに「上様」と記載するケースがあります。
しかし、「上様」では誰だかわかりませんので、宛名が記載されていないのと同じということです。

「上様」は、経理上では問題はないとされています。

領収書の宛名が「上様」であっても、経費精算することは可能ということです。
経費精算は、会社のために使われた支出を精算することが目的です。

会社のために使った支出なのですから当然精算されます。
しかし、会社(法人)によっては、それぞれ社内ルールや内部規定が定められています。
自分の勝手な判断で宛名なしや上様宛名の領収書を発行してしまって、それが経理担当者に認められないなどといったことにならないよう注意が必要です。
あくまで、会社のルールということですが。

でも、経理上では問題ないとされても、税務上では問題視される可能性があります。

領収書の宛名には、上様はなぜ良くないのですか?

領収書の宛名を「上様」にすることでいくつかの問題が起きてしまうことがあります。

上様の領収書も宛名のない領収書と同じで、宛名が記載されている領収書に比べると、経費に関する証拠としては不完全なのです。
そのため、税務調査が行われた際に、認められない不利な処分を受けることがあるという点に注意が必要です。

税務調査で経費が否認の可能性

所得税法や法人税法では、領収書の記載項目は特に定められていません。
つまり、所得税法や法人税法などに「上様領収書は認められない」という規定自体はありません。

そのため、宛名のない領収書でも、事業上必要な支出だったと示すことができれば、経費の証拠として認められます。

ただし、宛名のない領収書の場合、宛名のある場合とは異なり、
もしかしたら「他の人からもらったのではないか」とか、「私用で使われたのではないか」とか、「虚偽の金額を申告しているのではないか」と、
怪しまれて疑念をもたれてしまう余地が生じます。
金額が高額である場合などは特に税務調査で細かく追及される可能性があります。

つまり、税務署からの指摘を受けポイントが増えて、最終的に、経費であるとの証拠が不完全として経費が否認される可能性が高まってしまうのです。

もし経費が否認されれば、追加で所得税・住民税・法人税などを納付しなければなりません。
このようなリスクを避けるためにも、領収書には極力、上様ではなく正式な宛名を記載してもらいましょう。
もちろん領収書の但し書きなど他の記載が不完全、不十分な場合も同じことが言えます。

消費税の仕入税額控除が認められない

上様領収書では「消費税の控除」が不可能になります。

所得税法や法人税法では、領収書の記載項目は特に定められていないのですが、消費税法第30条9項1号は、領収書には「発行者」「取引日時」「取引内容」「金額」「書類の受取人」の5項目が必要であると記載があります。

消費税法においては、自分がもらった消費税と自分が支払った消費税の差額を納税するのが原則です。
消費税法においては、領収書や請求書の記載事項で宛名を明確にしておかなければ、支払った消費税の控除を認めないという規定になっているのです。

消費税が課税されていない個人事業主や会社を除いて、それ以外の個人事業主や会社は、宛名をしっかりと記載した領収書をもらう必要があります(消費税法30条9項1号ホ)。
領収書に宛名の記載がない場合、仕入税額控除の要件を満たさず、消費税の追徴課税を受けるおそれがあるので注意が必要です(同条7項)。

上様と記載された領収書は消費税法でいう「書類の受取人」の箇所が不明瞭となっているため、本当にその会社や個人事業主が支払ったものなのか判断がつかず、証拠能力に欠けるのです。

上様領収書やレシートは法律で例外的に認められる

消費税法第30条9項1号では、領収書には「金額」を含む5項目が記載されている書類が正式な領収書として認められるとあり、この5項目中で「書類の受取人」が宛名に該当しますから、本来は宛名の記載がなければ正式な領収書として認めてもらえません。

しかし、消費税法第30条及び施行令49条によれば、次のように決まっています。
「書類の交付を受ける当該事業者の氏名または名称は、その記載金額が3万円未満である場合や、小売業・飲食店業・写真業および旅行業などの特定の業種では3万円以上でも宛名の記載がなくても良い。」

つまり、
記載金額が3万円未満の領収書や小売業、飲食店業、写真業および旅行業などの特定の業種が発行する領収書(この場合は3万円以上でも)であれば、宛名がなくても上様領収書やレジから印刷されるレシートでも経費の証拠書類として提出できるということです。
消費税法施行令49条4項の列記する特定の業種
・小売業
・飲食店業
・写真業
・旅行業
・一般乗用旅客自動車運送事業
・不特定多数向けの駐車場業
・上記に準ずる事業で、不特定多数向けのもの

宛名のない領収書や上様領収書でも効力があるというのは、あくまでも税務署に対して有効ということです。
税務署よりも先に提出する会社の内部規定などでは、
「経費として精算する場合は、レシートや領収書に必ず宛名を記入すること」
というように定める場合も多いと思います。
そのお金を会社のために使用したかどうかを証明することができないためです。
「上様」だと、本当に本人が仕事上の経費としての支払ったかのという事実確認がしずらいのです。

領収書の宛名には会社の正式名称を書きます

領収書は正式な書類として扱われなければならないものですから、会社や取引先に提出する領収書の宛名には、企業の正式名称を記載するのがマナーとされています。
「(株)」などの略称は略さずに書かなければいけません。また、前株、後株も正しく「株式会社〇〇」「〇〇株式会社」としましょう。
社名の最後に御中を書き足すことも忘れてはなりません。
経理担当者が明らかな場合は、所属部門や氏名も記載します。
個人事業主の場合、宛名は個人名で問題ないですが、屋号がある場合は個人名の前に記載すると良いです。
店側に領収書の発行を依頼する際は、会社名や氏名が記入してある名刺を渡しておけば誤記のリスクが少なくなるでしょう。
会社からどのように宛名を記載してくるべきかという指定があれば、必ずそれに従いましょう。
会社によっては、会社名だけではない場合もありますから、注意が必要です。
領収書を発行してもらう前に、確認しておくことを忘れないようにしてください。

領収書の宛名以外の書き方

領収書の宛名以外の項目にも注目してみてください。

発行年月日
領収書は何年も保存するので、年がなく月日だけが記入されている場合は、発行年も書いてもらう必要があります。
いつ使われた経費なのかがわからないと保管してある意味がなくなってしまいます。
但し書き
但し書きの部分に簡易的に「お品代」と書かれているものは経費がどのような用途で使われたのかがわかりません。
具体的に何に経費を使ったのかをきちんと具体的な記載が必要です。
お品代としてはっきりしないままにしておくと、宛名同様税務調査の際に問題になる可能性もあります。
金額に「¥」と「-」
領収書では、金額の前に「¥」を、金額の後に「-」をつけることが決められています。
金額についても誤魔化したり後から改ざんしたりすることができないようにするためです。
また、金額を見やすくするために、3桁ごとに「,」をうつことも決められています。

領収書の訂正は発行者(店側)がおこなうものです

領収書は後から改ざんされることがあってはならない書類です。
自身が書類の受取人になっている場合、もらった領収書の宛名に誤りがあったり記入もれがあったりすることがあるかもしれません。
自分で誤りや記入漏れを書き換えてしまうのが簡単に思えてしまうかもしれませんが、領収書を受け取った人がその内容を書き換えることは原則禁止されています。
領収書を自分で訂正してはいけません。
税務調査で不正行為を疑われてしまう可能性があります。
領収書の項目を修正してもらいたい場合は、訂正前の領収書を発行者に渡し、正確に記載した領収書を再発行してもらうように依頼しましょう。
このとき、領収書の発行者は領収書の二重発行を避けるために修正前の領収書を回収するため、持参することを忘れないようにしてください。

できない場合は、領収書の発行者による宛名の誤記がある旨を、メモ書きで領収書に沿えておくのがベターです。

逆に領収書を発行側の場合、書き間違えてしまったときは、
訂正したい箇所に二重線を引いて、上から正しい文字を書き、訂正印を押すのが正しい方法です。
修正ペンや修正テープで消すことは認められません。

領収書と控えについてはこちらの記事です。

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まとめ

宛名のない領収書や、「上様」と書かれた領収書は、直ちに無効というわけではありません。
しかし、領収書の宛名で気軽に使ってしまいがちな「上様」ですが、正式な書類としてあまりよくないのです。
場合によっては税務調査で経費否認されたり、会社に経費精算を認めてもらえなかったりすることもあります。
特に、金額が大きいものは税務調査も厳しくなりますから、宛名にはきちんと会社の正式名称が書かれたものを受け取ることをお勧めいたします。



最後までご覧いただきありがとうございました。

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