土用の丑の日にうなぎを食べるのはよくききますが、土用は夏だけではありません。
土用とは立春・立夏・立秋・立冬の前の18~19日間のことを指します。
土用は季節の変わり目で、体調を崩しやすい時期でもあります。
この記事では土用の由来や、土用の過ごし方、「やると良い」と言われていることについてまとめています。
土用とは
土用といえば「土用の丑の日」が浮かぶ人も多いのではないかと思います。
でも実は、「立春」、「立夏」、「立秋」、「立冬」のそれぞれの直前の18~19日間を「土用」と言います。
年に4回、それも季節ごとにあるのです。
4つの「土用」それぞれ、「春土用」「夏土用」「秋土用」「冬土用」と呼ばれています。
「雑節(ざっせつ)」と「二十四節気(にじゅうしせっき)」
「立春」「立夏」「立秋」「立冬」など「二十四節気(にじゅうしせっき)」は、農作業の目安にするために中国で作られた暦です。
また「雑節(ざっせつ)」という暦がありますが、これは、中国の季節と少し違う日本の季節の変化をつかむための目安として日本で補助的に作られた日本独自の暦です。
雑節は、二十四節気などでは読み取れない、もっと細やかな季節の変化を、日本の風土を交えて表したもので、古くから季節の変化を知らせる大切な役割を担ってきました。
「土用」はその雑節と呼ばれる日本の四季の移り変わりをより的確につかむために設けられた暦日(こよみで定められた日)のひとつです。
ちなみに、その他の雑節には「彼岸」、「八十八夜」、「入梅」、「半夏生」、「二百十 日」、「節分」などがあります。
その年ごとの「雑節」については、国立天文台が「二十四節気」と一緒に毎年2月初めに翌年の暦(暦要項)を発表しています。
土用の起源
土用の起源は、古来中国から伝わった「陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)」に由来します。
陰陽五行思想とは簡単に言うと、「万物(世の中の全ての物)は木、火、土、金、水の5つの要素から成り立っている」という考え方です。
季節も、春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」、というように5つの要素のうち「土」以外の4つの要素が割り当てられています。
そして「土」はというと、それぞれ4つの季節の変わり目である、「立春」、「立夏」、「立秋」、「立冬」の直前の18~19日間に割り当てられました。
この「立」は「始まる」という意味で、「立春」、「立夏」、「立秋」、「立冬」はそれぞれ季節が始まるということです。
それぞれの季節が始まる直前の期間、つまり季節の変わり目であるこの期間は『「土」の「気」が旺(さかん)になる期間』とされ、元々は「土旺用事(どおうようじ)」と呼ばれていました。
この「土旺用事」の旺と事が省略され、「土用」となったといわれています。
土用の縁起のいいオススメの過ごし方
現在では土用といえば「うなぎ」のイメージが強烈です。
でも、土用というのは、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあります。
土用のオススメの過ごし方は、日ごろの疲れを解消するタイミングと考えて、何もせずに自宅でゆっくりとすることです。
昔の人の知恵と結びついた風習として、体調を崩しやすい時季であることを自覚してふだん以上に節制したり、重労働の農作業も休みましょう、新しいことを始めるのもやめましょう、旬のおいしいものを食べ、ゆっくりとすごしましょうと言われています。
脈々と伝わってきた風習には何か理由があるものなのですね。
では、やると良いと言われていることの前に、やってはいけないことがあります。
やってはいけないことは別の記事にまとめています。
-
土用にしてはいけないこと。土いじり、新しいことをしてはいけない理由。やってしまったらどうする。
土用の期間中に「やってはいけない」とされていることがあります。土を動かすこと。新しいこと。 現代では、あまり時期を気にせずに行っているようなことも、昔は、「土用期間中は禁止」とする風習がありました。「 ...
続きを見る
土用の期間に「やると良い」と言われていること
土用の期間中にはそれぞれその期間内に「やると良い」といわれていることが4つの季節ごとにあります。
見ていきましょう。
春土用(4月下旬~5月上旬)は「い」のつく食べ物と「白い」食べ物
春の土用は、なんとなくやる気が出ないなど、情緒不安定になることに注意といわれています。
春土用期間中の「戌の日(いぬのひ)」に「い」のつく食べ物や「白い食べ物」を食べると良いとされています。
戌の日とは12日に一度巡ってくる十二支の戌に当たる日のことです。
「い」のつく食べ物には、「いわし」や「いんげん豆」、「いちご」、「いか」、「いなり寿司」、「芋羊羹」、「糸こんにゃく」、「いちじく」などがあります。
また、「白い」食べ物には、「しらす」、「豆腐」、「白米」、「うどん」、「カリフラワー」、「大根」などがあります。
夏土用(7月下旬~8月上旬)は「う」のつく食べ物と「黒い」たべもの
夏の土用では、ジメジメした梅雨が明け、いっきに熱くなる時期で、夏バテや熱中症に注意といわれています。
四季の中でも夏土用の期間は暑さが本格的になり、体調を崩しやすいことから、「夏土用の丑の日」は夏バテの解消や疲労回復のために、柿の葉を入れた薬草風呂に入ったり、お灸をして体調管理に務めていたようです。
今一般的に広まっている「丑の日(うしのひ)」に「う」のつくものや、「黒いもの」を食べると良いそうです。
そのため、「土用の丑の日」には鰻(うなぎ)を食べる習慣になったとされています。
ほかに「鰻」以外では、暑気あたり予防には「瓜」、暑気あたりと解毒には「梅」、食欲がないときには「うどん」などがよいとされています。
現代的には「鰻」とともに「牛」もよいと思います。
外食の某「すき家」のうな丼と牛丼を組み合わせた「うな牛」は最高かもしれません。
また、夏土用は、梅雨明けの頃で、「土用干し」と呼ばれる習慣があります。主に3種類に分けられます。
「土用の虫干し」
湿度が高かった梅雨が明けのころに、害虫やカビなどから衣類や本を守るために行われるのが「土用の虫干し」です。
晴れた日が続いた乾燥した日に風通しの良い場所に陰干しをして風を通します。
最近は、建物の建て方やエアコンや除湿器の普及で昔ながらの虫干しもあまり見られなくなりました。
ニュースなどで報じられていますが、伝統ある寺院などでは今も行っているところもあるようです。
「梅の土用干し」
梅干しを作る際に3日間ほど日干しにすることを「梅の土用干し」といいます。
この土用干しをするのも梅雨明けの7月下旬から8月上旬ごろの夏土用のころです。
梅干しづくりに欠かせないのが土用干しです。
この土用干しをすることで、殺菌作用が働き、長期保存が可能になります。
さらに、果肉が柔らかくなり、色も鮮やかになって風味が増し、味もまろやかになります。
「田の土用干し」
田んぼの水を抜いて放置して土にヒビが入るまで乾かす作業のことをいいます。
「中干し」ともいいます。
田を乾かし、土中に酸素を補給して根腐れを防ぎ、根の活力を高めます。
稲は水を求めて地中深くまで根を伸ばすので、肥料をよく吸収するとともに、台風の強風にも強くなります。
その後再び乾いた田に水を入れると稲は水をよく吸収して良い稲穂が実るのです。
秋土用(10月下旬~11月上旬)は「た」のつく食べ物と「青い」食べ物
秋の土用は暑さがさり涼しくなる時期ですが、夏の疲れが出る時期ともいわれています。
秋土用は、「辰の日(たつのひ)」に「た」のつくものや「青いもの」を食べると良いとされています。
「た」のつく食べ物としては、「大根」、「玉ねぎ」や「たこ」。
「青いもの」なら青魚の「さんま」や「鯖」などが良いといわれています。
特に「さんま」がおいしい時期のため、「大根おろし」と組み合わせるのがおすすめです。
冬土用(1月下旬~2月上旬)は「ひ」のつく食べ物と「赤い」食べ物
冬の土用は、季節としては一番寒い時期で、風邪に注意といわれています。
冬土用は「未の日(ひつじのひ)」に「ひ」のつく食べ物や「赤い食べ物」を食べると良いとされています。
「ひ」のつく食べ物は「ヒラメ」や「ヒラマサ」、
「赤いもの」は「トマト」などがオススメです。
鰻は夏土用だけではない
夏の土用は「丑の日」に「鰻」を食べるとよいと言われていますが、実はこの風習、夏土用に限ったものではなく、昔は春土用でも秋土用でも「丑の日」には「鰻」を食べていたと言われています。
江戸時代です。売上に悩む鰻屋さんの亭主に相談を持ち掛けられた平賀源内さんが、店先に「本日は土用の丑、鰻食うべし」と大きく書いた看板を店先に出すようにと指示しました。
その鰻屋さんの看板を見た客が大勢押しかけくるようになり、他の鰻屋さんも真似をしたので風習が広まったという話があります。
栄養価の高い鰻は、暑い夏だけではなく体調を崩しやすい季節の変わり目、各季節にある「土用」の期間中には欠かせない食べ物ということです。
しかも、「鰻」の旬は本来は秋から冬にかけてなので、そもそも「鰻」は、秋土用や冬土用の方が美味しく食べることができます。
「鰻」は夏だけではなく、より美味しい秋も冬も食べてみてはどうでしょう。
※平賀源内さんは鰻の蒲焼きが大好きだったようで、当時の江戸を詳しく書いた『里のをだまき評』の中にも「土用の丑の日に鰻を食べると滋養になる」との記述があるようです。
まとめ
土用とは立春・立夏・立秋・立冬の前の18~19日間のことを指します。
土用は季節の変わり目で、体調を崩しやすい時期でもあります。
土用の作業については、季節の変わり目となり、1年とおして休む事なく働く農家にとっては、せめてこういう機会を利用して体を休める事も必要と言う意味で、風習から発生した「言い伝え」です。
土用のオススメの過ごし方は、日ごろの疲れを解消するタイミングと考えて、何もせずに自宅でゆっくりとすることです。
最後までご覧いただきありがとうございました。